開幕直後の苦しみ。スタートダッシュには失敗
開幕直後は産みの苦しみをたっぷりと味わわされた。たとえば、ホームのIAIスタジアム日本平における初ゴールは4月17日、通算5試合目となるカマタマーレ讃岐戦の前半20分に、キャプテンのFW大前元紀が決めるまで待たなければいけなかった。
当然ながら、ゴールを奪えなければ勝てない。それまでのホームの4試合で2分け2敗に甘んじ、大切なスタートダッシュでつまずいてしまった理由を、鄭大世は工夫が足りなかった攻撃に帰結させている。
「引いて守る相手には左右からクロスが一番いいんですけど、僕が試合に出られるまでは前線に高さがなかった。クロスに対して中で合わせる選手がいなかったから、全然ゴールを奪えなかった」
左右から質の高いクロスをあげる技術はもち合わせている。しかし、ゴール前に入る選手たちとの共同作業があって、初めてクロスは生きる。開幕直後のエスパルスは、左足小指の先端部分を骨折した181センチの鄭大世を欠いていた。
それでもクロスをあげ続ければ、それはピッチ上のフィードプレーヤーの思考回路が、機能的にシンクロしていなかったことを物語る。もちろんお互いに意識はしていても、勝たなければいけない、1年でJ1に戻らなければいけない、というプレッシャーに蝕まれてもいたのだろう。
リーグ戦の3分の1となる14試合を終えた段階で、5勝4分け5敗の10位。得点17に対して失点14となかなかエンジンがかからなかったチームを我慢強く指導してきた小林監督は、再びサポーターへの感謝の思いを口にする。
「苦しい時期にぶれることなく、選手やスタッフを応援してくれたことに本当に感謝しています。前半戦はサポーターの応援を力にできなかったというか、勝ち切れていなかったことがすごく重くのしかかっていたと思いますけど、後半戦はだんだんとそういうものに応えよう、感謝しようという雰囲気になった。
ビルドアップを左右のどちらですべきか、という点でまだ判断が上手くいかないところはあります。それで徐々に力をつけて最終ラインから丁寧に、個人がグループになってボールを運べるようになり、前線に足元と裏を狙える選手が出てきたことで、ゴールを奪えるようになったと思っています」