会心の勝利も…香川は出番なし。CLで挽回なるか
この時、エリア内にバイエルンの4バックと3ボランチが下がってはいたが、ただ並んでいるだけだった。昨季までのペップ時代にはあった規律と戦術が、バイエルンから失われている。アンチェロッティが持ち込んだ戦術的工夫は、今のところインサイドにポジションを取るフランク・リベリーくらい。もちろん単純な比較は難しいが、前日にレバークーゼンを相手に“首位”RBライプツィヒが見せたような、しっかりとしたコンセプトに基づくインテンシティの高いサッカーは皆無だった。
そういった意味でドルトムントはしっかりと相手を分析し、コンセプトを整えた上で、バイエルンに挑んだと言えるだろう。後半はバイエルンがペップの遺産を活用し、ポセッションを高めて押し込んできたが、今度は5バックが生きることになる。そして71分にはプレスからシャビ・アロンソのミスパスを誘い、オーバメヤンがカウンターを仕掛ける。ビルドアップの主軸を担うアロンソを狙ってのカウンターは、まさにペップ・バイエルン対策だ。
ペップの遺産を見越すことができるのは、トゥヘルならではだろう。そうやって後半もしぶとく凌いだドルトムントが、昨季王者に今季初黒星をつけた。試合後にフィリップ・ラームは「このリーグは今エキサイティングなものになっている。それはいつも誰もが求めていたものだ」と語った。王者バイエルンが陥落したことで、今季のブンデスリーガは群雄割拠の状態に突入したのだ。
このバイエルン戦で、香川真司はベンチスタート。今回トゥヘルがバイエルンを相手に用いた[5-1-2-2]で、もし香川を起用するとすれば、ゲッツェの入ったポジションになる。しかしコンディションを考えれば、ゲッツェに軍配が上がるのは必然だった。
そして、後半に入ってポセッションを高めるバイエルンに対して、トゥヘルは守備とカウンターを重視した交代策を切った。その意味でも香川に出番は訪れなかったと言えるだろう。次戦は22日のCLレギア・ワルシャワ戦。実質的に消化試合となるゲームでチャンスを掴みたいところだ。
(取材・文:本田千尋【ドルトムント】)
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