敗戦は痛手だが、「憑き物」を落とした感もある
苦笑いしながらJ1昇格プレーオフをも見すえた指揮官の表情から伝わってきたのは、焦燥感ではなく余裕に近いものだった。敗戦は確かに痛手だったが、同時に「憑き物」を落とした感もある松本山雅は横浜FCを相手に、前半のキックオフから本来のスタイルを全開にして襲いかかるだろう。
対照的に不安定な戦いが続くコンサドーレは、劇的な勝利で得た勢いをホームの札幌ドームへもち帰れるかどうか。最終節の相手は最下位のツエーゲンだが、負ければJ3への降格が自動的に決まる可能性が大きいだけに、それこそ目の色を変えて必死に挑んでくるだろう。
攻守に隙のないエスパルスの不安は、追う立場から追われる立場へと変わったことで、少なからず生じるプレッシャーとなるだろうか。相手の徳島ヴォルティスはホーム最終戦で気合いが入るだろうし、ホームで対峙した5月15日の第13節ではエスパルスが0‐1で苦杯をなめてもいる。
J1自動昇格チームがひとつも決まらない状況で最終節を迎えるのは、ヴェルディとコンサドーレが勝ち点88で並び、3差でサンガが追う2007シーズン以来となる。このときは最終節で勝ったコンサドーレが、引き分けたヴェルディを抜いて優勝。同じく引き分けたサンガも、サンフレッチェ広島とのJ1・J2入れ替え戦を制して昇格している。
果たして、2016シーズンはどのようなドラマが待ち受けているのか。人事を尽くして天命を待つ心境の田中が、いみじくもこんな言葉を残してチームバスに乗り込んだ。
「いやいや、そんなカッコいい言い方もあるけど、まずは次、勝たないと。今日もサッカーの難しさというもの思い知らされたし、本当に何が起こるかわからないスポーツだからね」
運命の最終節は20日、全国11のスタジアムで午後2時にいっせいにキックオフを迎える。
(取材・文:藤江直人)
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