「ヒラリー・クリントンの気持ちがよくわかります」(反町康治監督)
クラブ史上初のJ1昇格プレーオフ圏内につける6位のファジアーノ岡山と対峙したエスパルスは、鄭大世がJ2記録に並ぶ7試合連続ゴールをマーク。粘る相手を2‐1で振り切り、IAIスタジアム日本平に今シーズン最多の1万6740人が駆けつけたホーム最終戦を8連勝で飾った。
しかし、最も安定した戦いを演じてきた松本山雅の守備陣に綻びが生じる。FC町田ゼルビアの徹底したサイド攻撃の前に、前半だけで2失点を献上。猛反撃に転じた後半もFW高崎寛之の1ゴールにとどまり、約4ヶ月ぶりに喫した黒星とともに3位に転落してしまった。
後半のキックオフからしばらくして、メディアに配布される両チームの監督のハーフタイムコメント。ゼルビアにリードを許していた松本山雅の反町康治監督のそれには、めったにお目にかかれない言葉が並んでいた。
「どうせやられるなら、自分たちのサッカーで! 我々の力が試されている!」
異例にも映った檄も実らず、苦杯をなめさせられた直後の公式会見。敵地・町田市立陸上競技場のインタビュールームに姿を現した指揮官は、大きなため息をつきながらひな壇の中央に座ると、おもむろにこう切り出した。
「ヒラリー・クリントンの気持ちがよくわかります」
決着がついたばかりのアメリカ大統領選の敗者と自身とをダブらせ、会場の笑いを誘おうとしたひと幕からも、余計に悔しさが伝わってくる。松本山雅に何が起こっていたのか。反町監督が続ける。
「ハーフタイムでもコメントが出ているかもしれませんけど、前半はやはりどこかに重圧というか、違う意味での驕りというものがあるんですね。それをコントロールできなかった私の責任です。あれだけ攻められて、ゴールバーにも救われるという神頼みのようなことをしているようじゃあ、到底ゴールにはたどり着かないな、と」