清武に立ちふさがる「二つの壁」
清武は、なぜチームの歯車となれないのだろうか。サンパオリと日々にわたってコミュニケーションを取る強化部門の関係者は、清武に足りないものについて、次のように語った。
「キヨはピッチ中央を基本的なプレー位置としながらも、右サイドに顔を出すなど頻繁にポジションを変えて輝ける選手だ。問題はどこにあるのか? 彼の選手としてのクオリティーは決して問題ではなく、恩恵にしかならない。
ただ、コミュニケーションが課題だった。できる限り早くスペイン語を覚えてもらわなくては。我々の言葉を話せれば、チームへの順応はうまくいくはずだ」
スペイン語の授業において、フランス語、イタリア語、ポルトガル語、または英語を話せる者と一緒にアジア人が勉強しても、まったくついていけず置き去りにされるケースというのは多々あるが、清武も例に漏れずその壁にぶつかった。
また、もう一つの問題が日本代表でのプレーである。リーガ、チャンピオンズリーグと、一週間に2試合を戦ってきたセビージャにとって、インターナショナルウィークは戦術面での理解を深めるための重要な機会だった。が、ほとんどの中盤の選手がアンダルシアにとどまる中で、清武は遥か遠くのアジアへと旅に出て行った。清武が日本代表で活躍する程に、サンパオリのチームが育む共通理解において遅れを取ったのである。
清武にとって、セビージャでの日々は苦闘の連続である。ただし、これから流れを変えることは可能かもしれない。
日程に関して言えば、代表戦は来年の3月まで行わることがなく、一方でセビージャはリーガ、チャンピオンズにコパ・デル・レイを加え、3大会を並行して戦うことになる。サンパオリは「3大会すべてで良い役割を演じたい」と意気込むが、今後ローテーションを敷く可能性は十分。たとえナスリが直接の比較対象であろうと、ピッチ上に中盤の攻撃的選手を4人も並べることがあるサンパオリのチームにあって、清武が出場時間を手にしていくことは可能である。