飽和状態にある中盤の選手層
そうしてセビージャは、サンパオリと契約を交わした。サンパオリは契約書にサインを交わす前からモンチとチーム構想について話し合っていたが、清武との契約には異論を挟まず、むしろ良質な選手と得心していた。
ただし、このアルゼンチン人指揮官は清武だけではもの足りないということで、モンチに対して中盤のさらなる補強を要請。そして加入したのが、モンチが以前から目をつけていたフランコ・バスケスであり、またサンパオリ本人が「現代フットボールでは滅多に見られなくなった、繊細な技術を有する選手」と絶賛し、いつの日か自チームに加えることを夢見ていたガンソである。
またマンチェスター・シティのサミル・ナスリをレンタルで獲得できる可能性が浮上すると、モンチ、サンパオリともに絶対に逃せない機会と考え、すぐさま話をつけた。
こうして清武はサンパオリの構想下によって加わった選手に囲まれることに。サンパオリのようにポゼッションを重視せず、ゲームメーカーをそれ程必要としない堅守速攻をプレースタイルとするエメリの下であれば、このような競争にさらされることもなかったろう。しかし現実は理想と異なり、リーガでは第4節以降出場機会がないなど、戦力外同然の扱いを受けることになった。
サンパオリは、清武のことをてんから信用していなかったのだろうか? その解は、確実にノーだと言える。彼が清武との契約に反対しなかったのは、その実力に疑いの余地はないと判断したためなのだから。
実情は、戦力に数えたいものの容易にはそうできない、ということにほかならない。そう、セビージャはサンパオリの志向する超攻撃的なフットボールを最近に機能させつつあるが、その中で清武は様々な要因によってはまりづらい歯車となってしまっているのだ。それはサンパオリ、またモンチにとっても想定外の出来事だったようである。