進化の兆しを見せたハリルジャパン。来年3月から最終予選の後半戦へ
そうした方向性はこのチームの立ち上げ時から練習では見られ、しばしばハリルホジッチ監督もその手応えを語ってはいたが、ようやく試合のパフォーマンスに表れてきたことは、勝利に加えてポジティブに評価できる。
高い位置でボールを奪い、そこからショートカウンターにつなげられれば高確率でチャンスにつながるが、それだけに頼るだけでなく、自分たちからチャンスを作り出していく。後方からの速いグラウンダーパスはそのベースになるものだ。
「あとはもっと高いインテンシティの中でミスを減らすこと。僕もミドルレンジからロングレンジのパスをうまく通せなかったですし、そういうところの確率をもっと上げていければ、もっといいサッカーできると思います」
吉田は「目の前の敵を1つ1つつぶしていくことが一番大事」と強調しながらも、その先にある世界にもつながるチームの道筋をイメージしている様だ。そのパススピードに加え、攻守の切り替えや“デュエル”といったチームのスタンダードを徐々に引き上げながら、対戦相手に応じた戦い方で勝機を見出していくのがハリルホジッチ監督のスタイルだ。
「フットボールに関してはなかなかすぐには発展しないということです。多くの人はなかなか待てない。特にサポーターとメディアは早く結果がほしいと。何日かで色んなことがすぐに変わると思ってしまう人もいます。それもおそらく、期待に応えなければいけないとは思っています」
昨年9月にテヘランで行われた二次予選のアフガニスタン戦を前に、アルジェリア代表で厳しい批判にさらされながらブラジルW杯でベスト16に勝ち上がり、世界王者となるドイツを最後まで苦しめた経験について質問した時にハリルホジッチ監督はそう回答していた。そして一度、樋渡通訳の言葉が終わるのを待って付け加えた。
「色んなところで批判が起きるのはノーマルだと思っています。全世界の代表監督というものはいつも批判されています。ただ、私はするべきことを分かっていますし、おそらく1年後、2年後、3年後にはまた別の話になっているのではと思います」
その光りが少し射し込んできたが、まだまだ道半ばにある。来年3月に再開される最終予選の後半戦でどういったパフォーマンスを見せ、世界への扉に辿り着けるのか。まずは4ヶ月間、選手個々のクラブでの奮闘にかかっている。
(取材・文:河治良幸)
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