松本山雅のサポーターはやりがいを感じさせてくれる
――そのときは、まさか将来自分が松本のランドマークになるとは想像もしていない。
「半年間、自分にできることを精一杯やって実力を試し、トライアウトを受けるつもりでした。そこで、どこにも引っかからなかったらサッカーを辞めよう。その覚悟でいたと思います」
――半年で11試合に出場し、気持ちが変わったんですか?
「東京で試合に出ていなかった自分のような選手に対する期待感がひしひしと伝わってきたんですね。街を歩いていたら、サポーターから声をかけられ、取材も毎日のようにある。これはやらんといけん。自然とそう思わされた気がします。
あとはスタジアムの雰囲気も。言葉が悪くてすみませんけど、あの頃のヴェルディはキャパの大きい味スタ(味の素スタジアム)にお客さんがまばらで。いまはだいぶ盛り返しているんですかね」
――飯田選手、じつはビタイチ変わっていません! 安定して、5000~6000人の間。
「あ、そうですか。僕ら、いつも大勢のサポーターとアウェーに行くので、感覚的にわからなくて」
――飯田選手、その話はもうそのへんで。
「とにかく、アルウィンはキャパが小さいので、同じくらいの人数だとしても、まあまあ入っている感じになるんですよ。熱気がギュッとなる」
――スタジアムの雰囲気。サポーターの熱さを感じられること。ここで充実感を得られることは、やはり選手にとって重要ですか?
「大事だと思いますね。アルウィンが満員になると、ピッチに入るときから緊張感が違います。自分たちががんばって結果を出すことによって、大勢の方々が喜んでくれる。都市部に比べて松本市の人口は少ないので、チームを応援してくれる人の割合の大きさも違います。
試合で勝つことによってサポーターを笑顔にできるか、負けてがっかりさせてしまうか。それを委ねられている責任というか、やりがいは非常に大きいです。いい試合をやって勝った次の週は、そこかしこから『よかったぞ』と声をかけられる。
車に乗っていたら、信号待ちのときに前の車からわざわざ人が降りてきて、こっちに向かって手を振ってくれるんです。びっくりしましたよ。ああ、いい街だなとだんだん自分の心と身体に松本がなじんでいきました」
(取材・文:海江田哲朗)