松本がどの辺りにあるのかも把握していなかった
――風向きが変わった。
「はい。善之さんは『山雅は熱いチームで、地域の熱気も高い。おまえにとって絶対プラスだ』と熱を込めて話してくれました。そこで、どうやらクラブの間で話がついているということもわかりましたね。
僕はヴェルディの雰囲気、チームメイトが好きだったし、ここで伸びるという感触も得ていました。最後まで使ってもらえないとしても、年末のトライアウトを受ければ移籍先はあるのではないかと。
一方で、バウルさんの背中を見ながらやってきて、自分がどれくらい試合でできるのか試してみたい気持ちも強かった。しかも、3年契約ラストの半年ですからなおさらです。100%片道切符なんだろうなと思い、少し考えさせてくださいと返事をしたんです」
――大事なことですから、一度は持ち帰って検討しないと。
「すると、『いや、おまえは荷物をまとめ、3日後には松本に行かなければいけないんだ』と善之さんが」
――猶予ゼロ!
「たしか選手登録の期限が迫っていたのかな」
――完全に根回しが済んでましたね。
「すぐ松本に行きましたよ」
――加藤GMの慧眼が窺えます。即戦力で、かつ長期的にチームの幹となってくれる選手を探し、ちょうど浮いていた飯田選手に目を付けた。松本のことは知っていたんですか?
「まったく知りませんでした。2ヵ月くらい前に練習試合をやって、そのときに初めて名前を耳にした程度。そもそも松本ってどのへんにあったっけと」
――社会人としてまずいですね、それは。
「まずいですけど、なにせ関東育ちで出たことがなかったものですから、いまいちピンとこなくて」
――いまだったら、パパッとスマホで検索したでしょうが。
「車で行くと聞いていたので、そんなに遠くはないだろうと軽く考えていましたね」
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