フィジカルとメンタル、両方の強さを具える必要性
いくらフィジカルが強くても、精神的にも強くなければ厳しいプロの世界で生き残れない。最近ではメンタルを鍛えるコーチにつくアスリートも多い。サッカー選手も例外ではない。選手が試合で100%のパフォーマンスを発揮できるためには、身体面だけでなく心理面のコンディションを整えることも重要なのだ。フィジカルとメンタルは両方のバランスがとれてこそ、選手は試合で十分な力が発揮できる。
英国のスポーツジャーナリスト、マイケル・カルヴィンが、英国プロサッカーリーグの「スカウト」に密着取材した”The Nowhere Man”を読み、スカウティングでもメンタルの要素を重視していると知って興味深かった。
もちろんテクニックや体格も重要な要素であるが、素質がある少年たちが大きく「化ける」かどうかはフィジカルと同じくらいメンタルの強さmental toughnessが重要だ、という。
アーセナルがスカウティングにあたって32項目にわたって見るべき資質ポイントをあげたシートがあるそうだ。体格、性格、テクニック、理解力という4つの基礎的要素を中心にして、メンタルの強さ、攻撃性のコントロール、努力家であるか、適応性などが重視されている。
たとえばロベール・ピレスをスカウトするにあたって、14回足を運んでチェックしたスカウトが、最後に引っかかったのが彼のメンタルが果してどれくらいタフであるか、だった。
メンタルの強さは、追い込まれたときにどのようなプレーをするかに現れる。そう考えたスカウトは、その試合に負けたら2部に降格するところまで追い込まれたマルセイユで、ピレスがどんなプレーをするかを観察した。そして決断した。
「彼(ピレス)はチームを双肩に背負ってプレーしていた。素晴らしかった。(中略)翌朝、アーセン(ベンゲル)に電話した。ピレスとサインしなさい、と」
ビッグクラブにスカウトされるためには、テクニックや戦術理解力だけでは足りない。フィジカルフィットネスとメンタルタフネスをそなえていること。そしてそれだけ揃った選手は、やはり希少だということか。
(文:実川元子)
【了】