セスクは出番減少も…
そのアザールの自身2点目が決まる数分前には、ホームの観衆からチームのパスワークに拍手喝采が起こっていた。2期に渡るジョゼ・モウリーニョ時代にも、チェルシーのパス回しに歓声が起こることはあったが、それは逃げ切りを狙った終盤のボールキープに対して。小気味好い攻撃的なパス回しに観衆が酔った記憶となると、フィル・スコラーリ体制の初陣となったポーツマス戦で格下を料理した8年前の開幕戦まで遡る。
先のエバートン戦では、終始ボールホールダーに2つはパスオプションが提供されていた。前線で孤立して苛立つこともなくなったコスタが、敵の挑発ではなくプレーに集中できているのも頷ける。
完璧なシステムなど存在しないことは、コンテ自身が就任会見当初から認めるところだ。チェルシーの3-4-3にしても、昨季までの中枢セスク・ファブレガスに居場所がない。だが、それでも仕方のないレベルでチームは機能している。
テリーはケイヒルと、ウィリアンやオスカルはペドロとの定位置争いを強いられるように、セスクもマティッチとカンテの相棒役を争うしかない。
新監督が前提とするハードワークの意識を高められなければ噂のレンタル放出も致し方ない。結果に裏付けられた、「このチームにはこのシステムが合っている」というカンテの発言に異論を唱える者はいない。ファンの間でも、システム変更を機にセスクを使うべきだとする声が収まっているように。
(取材・文:山中忍【ロンドン】)
【了】