ストライカーであるが故の難しさ
彼がトッテナムでなかなかゴールに恵まれないのはなぜか。それは「ストライカーだから」だ。ケインとは違い、ペナルティエリア内での決定力で勝負する、実にオランダ人らしいFWのように見える。
昨季のリーグ戦全27得点を振り返ると、PKによる5点を除く22個のゴールは、そのほとんどがサイドからのクロスや折り返しから生まれていた。ペナルティエリア外からのミドルシュートのような遠目からの得点はほぼない。
伝統的に4-3-3を採用し、突破力のある両ウィングからのボールを中央で待つFWがゴールに変えるスタイルのオランダリーグでは、長身かつパワーを備えた前線でボールを待つタイプのストライカーが多い。
ヤンセンは典型例とは少し違い、相手最終ラインとの巧みな駆け引きから有利なポジションを取ってゴールに迫る術に優れており、テクニックで180cmというそれほど高くない身長をカバーしている。さらに守備にも積極的でボールを失えば全力で取り返しに走る献身性も備えている。
それでもプレーの中心はペナルティエリア内で、ゴールを決めるには周りのお膳立てを必要とする。ケインのように攻撃のあらゆる局面に顔を出して自らを生かすタイプとは違い、チームメイトに動きを理解してもらわねば得点力を発揮しづらい。まだそこの意識の共有は不十分のようだ。
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