「お金を使ってでも、残すべき選手は残していこうと考えています」
この結果として、残り2試合となった段階で降格圏となる16位に再び転落。現実問題として「降格」の二文字がちらついてきた状況に、初めて残留争いを経験する闘莉王は必死に自らを奮い立たせていた。
「(3週間空いて)多少みんな堅くなってしまったところもあるし、思い切ったことができなくなってしまったところもある。後半の立ち上がりに失点してしまったことで、展開的にも苦しくなったこともあるけど、ここからもうひと踏ん張りしなきゃいけない。
よくここまで来られたと言えばそれまでだけど、ここからです。(残り2試合は)僕から言わせてもらえば、メンタルが非常に大切なところ。顔を出すべきところで出さない、パスをつなぐべきところで蹴るのではなく……難しい判断になるけど、こういう状況だからこそ、というのもあるので」
しかし、笛吹けども踊らず。プレッシャーのほうが上回り、精彩を欠いたグランパスはヴィッセル神戸、そしてベルマーレ戦でともに3失点を献上。意地や粘り、執念を見せられないまま終戦を迎えた。
ショックが残るなかで、今後の焦点はベルマーレ戦に続いて開催されたホーム最終戦セレモニーで、ファン・サポーターの大ブーイングを浴びながら久米社長が約束した「1年で絶対にJ1へ戻る」に集約される。
2008シーズンにクラブ初のGMとして迎えられ、昨年4月にはメインスポンサーのトヨタ自動車出身者以外では初めてとなる社長に就任した久米氏は、記者会見でJ1復帰へのロードマップを具体的にこう描いていた。
「1年でJ1へ戻って来ようとすると、やはりガンバさんや柏さんのように、(昇格して)すぐに優勝するようなチームにしないと。そのためには、いまいる選手たちをしっかりと口説いて、残ってもらうこと。
他チームからのオファーをすべて蹴散らすくらいの、要するに熱い信念といったものがないと、選手たちはあっという間にいなくなってしまうのではないかと。お金を使ってでも、残すべき選手は残していこうと考えています」
小倉前監督を任命した責任、7月末のサポーターズミーティングで「J1に残留できなかったら辞めます」と公言している責任を取って、クラブの会長を務めるトヨタ自動車の豊田章男社長に進退伺を出す意向も明かした。
一方で「J2に落としておいて逃げていくのは、どうなのか」とも明言。グランパス再建へ全力を尽くす考えも明かしたが、降格から一夜明けた4日、進退伺はクラブの佐々木眞一代表取締役副会長にあっさりと受理された。