指導者経験なしで監督に就任した小倉隆史氏
名古屋グランパスのオフィシャルウェブサイトに入り、トップチームのスケジュールを確認してみると、今月の後半以降は「未定」の二文字がずらりと並んでいる。
湘南ベルマーレに1-3の完敗を喫し、クラブ史上で初めてとなるJ2への降格が決まったのが今月3日のセカンドステージ最終節。一夜明けた4日から、グランパスは1週間のオフに入っている。
天皇杯でも緒戦となった9月3日の2回戦で、J3のAC長野パルセイロに0-1で苦杯をなめている。今シーズンの具体的な目標がなくなった状況で、選手たちは今後の身の振り方に思いをめぐらせている。
たとえば、今シーズン限りで契約が切れるFW永井謙佑。すでに新天地としてFC東京の名前が挙がっているなかで、ベルマーレ戦後にはこんな言葉を残してホームのパロマ瑞穂スタジアムを後にしている。
「うーん、考えていないね、何も。またオフ明けにでも聞いて」
今後は11日に練習を行い、12日には豊田スタジアムでファン感謝デー『LOVE GRAMPUS Festa 2016』を開催。13日から3日間、練習を行った後は前述のように「未定」となったままだ。
Jリーグが産声をあげた1993シーズンに名前を連ねた、いわゆる「オリジナル10」のなかでJリーグ創設からJ1に居続けているクラブはこれで鹿島アントラーズと横浜F・マリノスだけになってしまった。2010シーズンにはJ1を制覇した名門は、なぜ悪夢に見舞われたのか。
ピッチ内に限定した原因を追究していくと、クラブワースト記録となる17戦連続勝ち星なしの泥沼にあえいだあげく、8月23日に実質的に解任された小倉隆史前監督の手腕に行き着かざるをえない。
GM補佐を務めていた小倉氏は、グランパスの再建を託される形で、コーチを含めた指導者の経験がないまま今シーズンから指揮を執った。もっとも、ファーストステージそのものは上々なスタートを切った。
開幕戦でジュビロ磐田に勝利し、第2節では昨シーズン王者のサンフレッチェ広島とドロー。199センチ、93キロの巨漢FWシモビッチの高さ、韋駄天・永井のスピードを前面に押し出す、シンプルなスタイルが奏功した。
セットプレーとカウンターを徹底すれば、ある程度の結果は残せる。しかし、就任会見で目指すスタイルを「5人目までが連動するサッカー」に据えていた小倉前監督は、シーズン序盤にこんな言葉を残していた。
「目指すべきサッカーがもちろんあります。高さとカウンターだけであとは引いて守る、ということはやりたくありません。ただ、勝たなければいけないのもプロの世界。勝たないと僕、クビを切られちゃうので」