前線はどんなメンバーにすべきか?
では、どのようなメンバーを前線に起用すべきだろうか。1試合平均の走行距離ではプレミアリーグ最低で、“走れないユナイテッド”の汚名を返上するためにも、アントニー・マルシャル、マーカス・ラシュフォード、ジェシー・リンガード、そして10節のバーンリー戦に途中出場し、なぜかスプリントを繰り返していたメンフィス・デパイなど、走力重視の人選がベターだ。
イブラヒモビッチを外すと仮定した場合、特大のポテンシャルを持つポール・ポグバは絶対に必要だ。現時点で共存は考えられず、この両選手とともに期待の新戦力だったヘンリク・ムヒタリアンの調整が遅れているのだから、口にこそ出さないがモウリーニョ監督も憤懣やるかたない、といったところに違いない。
ただしポグバに関しては、ライオラ(先述)がいたずらに駆け引きして入団が遅れたため、ぶっつけ本番に等しい状況でシーズン開幕を迎えたハンデがある。実戦の数とともにフィット感も増しており、モンスターぶりを発揮する日もそう遠くはないだろう。
また、先発した際のデータ─4勝2分─というファン・マヌエル・マタのデータは重視せずにはいられず、さらにパサーのマイケル・キャリック、豊富な運動量で広範囲をカバーできるモルガン・シュネデルランも、よりクローズアップされてしかるべき存在だ。
ルーニーとズラタンの不振、ムヒタリアンの調整不足という予期せぬ事態が続いているいま、前線をエネルギッシュな若者で支え、中盤は好調を維持するマタとポグバのポテンシャルに期待するしかない。知名度とか過去の実績ではなく、動ける選手をメインとするプランに一刻も早く切り替える必要がある。
ビジネスの世界でも、生き残る企業は時代の流れを敏感に察知してトランスフォームしていった。モウリーニョもバスを並べたり、前線にスターを配置したりするだけでは勝てない、と気づいているはずだ。チェルシーを圧倒的な強さでリーグ優勝に導いたのは2シーズン前だった。世界的な名将が、劣化しているとは思いたくない。
(文:粕谷秀樹)
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