「アシスタントは監督と適度な距離を保つことが必要です」
今でもアルジェリア代表の試合があると、彼の名前が必ずどこかで持ち上がる。つい先日もセルビア人監督のラジェバッツが更迭されたが、すぐさまハリルホジッチ復帰を求める声が挙がった。
「ヴァイッドとともに働くのに必要なことは、彼と同じだけのフットボールへの情熱と、仕事に対する厳しさを持っていることです」とクリシは語る。
「さらに重要なのは、信頼です。アシスタントは監督と適度な距離を保つことが必要ですが、お互いへの信頼があってこそ、それが可能になる」
「そしてもう一つ、機密事項を厳守すること。ヴァイッドのアシスタントをしていた時代、私は彼の許可なしには一切メディアとは話をしませんでした。それを知っていたから、ヴァイッドも私を信用してくれていたのだと思います」
ハリルホジッチは、裏表のないまっすぐな人物だとクリシは語る。
「彼は優しく、なにより能力の高い指揮官です。厳格な男という印象を与えているかもしれないが、いったん現場を離れれば、彼も一人の人間で、弱味や繊細な部分もあった。たとえて言うなら、彼は“ビロードの手袋に包まれた鉄の手”、そんな人物ですよ」
(文:ヤシン・ブアリ/翻訳:小川由紀子)
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