ハリルをよく知る、アルジェリア時代のアシスタント
一般的にヴァイッド・ハリルホジッチという監督は、歯に衣着せずに物を言う、強い個性を持った人という印象を持たれていることだろう。しかし実際には、彼は周囲の者の意見にもすすんで耳を傾ける人間味にあふれた人物だ。
それを良く知るのがノルディン・クリシ。
ハリルホジッチがアルジェリア代表監督を務めた際に、3年間アシスタントコーチとして彼の右腕となって働いた人物だ。彼らが率いたアルジェリア代表は、2014年のブラジルW杯で同国史上初の16強進出を果たした。
「ヴァイッドとは30年来の知り合いです。彼がFCナントの選手としてフランスで初めてプレーした試合で、偶然にも私は対戦相手の一員として彼とマッチアップしたんです。我々は同じ価値観を共有し、似通ったフットボール観を持っていました」と自身もかつてアルジェリア代表のディフェンダーとしてプレーしたクリシは語る。
「ヴァイッドは完璧主義者で、どんなに細かいことも決していい加減に済ませたりはしなかった。スタッフの話にも熱心に耳を傾ける人でした」
それを裏付ける逸話がある。アルジェリア代表監督に就任したハリルホジッチがまずサッカー協会のスタッフを驚かせたのは、彼が毎日、朝早くに練習場に現れては、トレーニング器具や道具をつぶさにチェックしていたことだった。実際彼の進言でさまざまな変更が行われ、中にはクビになったスタッフもいたという。
ハリルホジッチが着任した時には、アルジェリア代表には専用のトレーニング施設さえなく、合宿時には毎回わざわざフランスまで遠征していたが、ハリルホジッチはアルジェリアサッカー協会のラオラオア会長をさかんにつついては代表チームのためのトレーニング施設の完成を急がせた。そうして首都アルジェの南、約30kmの広々とした敷地内に完成した『シディ・ムサ』は、現在では素晴らしい総合スポーツ施設として機能している。