攻守両面で重要な働き。クロップ監督にとって替えの効かない存在に
フィルミーノの強みは攻撃面でも生きる。現在同僚の2人とも、クロップ監督がドルトムント時代に重用したロベルト・レバンドフスキやピエル=エメリク・オーバメヤンとも違い、得点以外の場面でも輝ける。
正確に言えば「消える」が正しいだろうか。フィルミーノはペナルティエリア手前を縦横無尽に動き回ることで周囲の選手たちが走りこむスペースを作る。そこにサイドからサディオ・マネやコウチーニョが絡んでコンビネーションでゴールに迫り、中盤のアダム・ララーナやエムレ・ジャンの飛び出しを促す。自らの存在感を消して味方を活かす術を心得ている。
ちょんまげ姿のブラジル人アタッカーが見せる幅広く動きながらのコンビネーションの質は数字にも表れており、4ゴール3アシストと多くのゴールに関与している。攻守にわたってチームへの貢献度は絶大だ。
もちろんクリスタル・パレス戦のように相手ディフェンスラインとの駆け引きから絶妙なタイミングの抜け出しで、ストライカーとしてゴールを奪うこともできる。おそらく昨季の10得点は簡単に超えていくだろう。
現状フィルミーノと同じ働きをこなせるアタッカーは今のリバプールにいない。テクニックとインテリジェンスだけでなく、フィジカル的なタフさも求められる非常に要求の高いポジションであり、クロップ監督も替えの効かない人材と考えているに違いない。
リバプールは爆発的な攻撃力の反面、セットプレーや浮き球の処理など守備面に大きな不安を抱えている。さらに豊富な運動量とメンバーの固定化によって身体的な負担も大きい。幸いヨーロッパのカップ戦がないためトレーニングに時間を割くことができ、フィジカルコンディションも維持しやすいことが現在の躍進につながっているとも言える。守備の課題は徐々に解決されていくだろう。
失点を減らしても得点を減らしては意味がない。フィルミーノをはじめ、コウチーニョやマネ、ララーナといった前線のアタッカー陣の奮闘こそが好調を維持するカギになる。クリスタル・パレス戦は課題と強みが一度に出た、今後に向けて大きな意味のある試合だった。
(文:舩木渉)
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