「実直なプレー」を見せる義務
「前節のジェノア戦で、現実的にミランは12-14人しか戦力になっていない事が証明されたわけですが?」「レギュラー以外の選手は力量を発揮できなくなっているように見えますが?」はっきり言葉にはしないが『ジェノア戦で本田圭佑は失敗したのだ』というアピールが含まれている。スソのバックアップとしての役割も果たせなかったことで、印象を悪くした。これが現実である。
周囲がこれだけ騒いでいると、選手本人にはそれこそ想像し得ないプレッシャーが掛かっていることだろう。だが、もう少し足掻いてほしいとも思う。
インテルでは長友佑都が結局出場機会を取り戻しているし、そのインテルとUEFAヨーロッパリーグで対戦したサウサンプトンでは吉田麻也が頑張っていた。レギュラーのCBが強力なためポジション争いでは厳しい立場にありながら、巡ったチャンスを大事にしてインテルFWマウロ・イカルディを懸命に抑えていた。インテル番の地元記者にも印象は良かったのである。
チーム事情が違うので単純な比較は避けるべきではあるが、正直なところジェノア戦での本田には彼らとの落差を感じた。
前節のレビューの蒸し返しになるが、4-4-2へのシステム変更の中でもサイドに張らず中央に寄り続け、展開の開けないバックパスやトラップミスを連発させたのは残念だった。
中央で距離を縮めて連携を作りたかったのかもしれないが、そもそも本田がミランで周囲と連携を噛み合わせることが出来たのは、シニシャ・ミハイロビッチ監督のもと右サイドで起用されていた頃の話だ。監督によってタスクは違うだろうが、求められることをこなして結果に結びつけて欲しかった。
常に批判を受け続ける環境で、便利屋に徹してクラブでの居場所を勝ち取ることばかりが全てではないかもしれない。ただサポーターに苦言を呈するまでにクラブを勝たせたい、チームメイトを助けたいと思うのならば、実直なプレーを通してその姿勢を見せる義務が選手にはあるのではないだろうか。
(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)
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