10年ぶりに日本が経験できる舞台
「やっているサッカー自体は前回も手応えはあった」と内山監督は語る。前回は南野拓実や井手口陽介といったタレントはいたし、総合力で現在のチームより明確に劣っていた印象は無い。大会前からチームが成長して準々決勝まで進んだが、北朝鮮を相手にPK戦で涙を飲んだ。対戦相手や試合の環境など巡り合わせもあるかもしれない。
前回との違いに関して坂井は「しっかり決めるべきところで決められたのが、すごく大きかったと思います」と語る。基本的なサッカーのベースは崩すことなく、状況に応じて選手が今どうするべきかを共有しながら、適材適所のパフォーマンスを発揮する。その積み重ねがカタール戦の3ゴールやタジキスタン戦の4ゴール、そして5試合無失点という結果につながったということだろう。
世界への扉を開いたチームは残る2試合に勝利し、アジア王者になるための戦いが残っている。そこでさらに彼らが成長してくれることを期待したいが、来年5月のU-20W杯を目指す上では個人としてもチームとしても、スタンダードのレベルが不足しているように思う。
そこは代表チームとして大会を経験するだけでなく、それぞれのクラブで年齢に関係ない競争に身を投じ、トップチームで地力を付けていくことで向上していくものだ。もちろん、今回のメンバーに選ばれなかった選手たちの台頭にも期待せずにはいられない。
高校を卒業あるいはトップ昇格の1~2年目というのは選手にとって成長に大きな差が付く時期でもあり、クラブでどういった経験を積めるかでも変わってくる。ここから7ヶ月後にどういったチームになっているか現時点では分からないが、この年代が過去10年に渡り日本が戦えなかった舞台を経験し、観る側も楽しむことができること。その喜びはまた何物にも代え難いものだ。
(取材・文:河治良幸【バーレーン】)
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