モウリーニョ、敵将として古巣に凱旋も…大敗で喫した「屈辱」
昨季半ばの解任から10ヶ月、マンチェスター・ユナイテッドを率いてスタンフォード・ブリッジに戻ったジョゼ・モウリーニョは、チェルシー戦のキックオフを前に「他チームとの試合と同じ心境だと言ったら嘘になる」と語った。だが、その表情は冷静そのもの。感情を抑えて2期に渡る計5年間強を過ごした古巣との対決に臨んでいた。
しかし、最終的に隠せなかった感情が1つ。「屈辱」だ。
試合翌日の10月24日、チェルシーの大勝ではなくマンUの大敗を報じる国内各紙の見出しには、ほぼ一様に「Humiliation(屈辱)」の文字があった。モウリーニョにとっては、プレミアリーグで過去最悪となる4点差の敗北。『テレグラフ』紙は、お馴染みの「Special One(選ばれし者)」ならぬ「Humiliated One(屈辱を受けし者)」と、マンUの新監督を呼んだ。
試合終了直後、チェルシーの新監督に「辱めを受けた」と直接抗議したのはモウリーニョ自身。終盤にホームの観衆を煽ったアントニオ・コンテの行動が、「スコアが1-0や2-1ならわかるが、4-0でファンに声を上げさせるとは品格に欠ける」のだという。だがこれは、黙っては引き下がれない性格と敗戦の苛立ちが言わせた不平だろう。
コンテも、「モウリーニョに恥をかかせようと思ってなどいなかった。4点差をつけた選手たちは拍手喝采を受ける資格がある。声援を呼びかけても当然のはずだ」と説明している。筆者は、ロンドンから車で5時間ほど離れた国内南西部のホテルでテレビ観戦していたが、画面から聞こえてくるのはマンUサポーターのチャントばかり。強豪対決での価値ある勝利のエンディングに、コンテがスタンドのチェルシー陣営による歓声を求めたのも無理はない。
反応したチェルシーサポーターも、モウリーニョを辱めようと歌ったわけではなかったはずだ。一部には、エンゴロ・カンテがチーム4点目を決めた後で起こった「ジョゼ・モウリーニョ」の連呼を、ライバルに寝返った元監督への当て擦りだとする報道もあったが、実際には少数派が歌い出した「朝にはクビだな!」というモウリーニョへの“口撃”を打ち消すべく、心ある大多数が「チェルシー史上最高」と認める元監督の名を歌い上げたように思われた。