ボール保持率で上回るもバレンシアのインテンシティに苦戦
こういう状況でキックオフを迎えたこの一戦、トータル・ポゼッション70%対30%、総パス数645対274とバルセロナが数字上圧倒しているが、そうした印象を覆い隠すほど、この日のバレンシアの集中力とインテンシティは素晴らしかった。
試合開始当初からしっかりと守備ブロックを構築してくるバレンシアを攻めあぐねるバルセロナは、開始からわずか14分でイニエスタを負傷で失うという不運に見舞われる。一方のバレンシアは、少ないチャンスを右サイドのカンセロの突破を中心にカウンターの機会をうかがう。
そんな緊迫した中で試合は動く。22分、決して相手を崩し切ったとは言い切れないが、イバン・ラキティッチの右サイドからのグランダーのクロスボールのこぼれ球にメッシが飛び込みゴールを奪う。その際にオフサイドポジションにいたスアレスのプレー関与の是非については早速スペインでは論争を呼んでいる。
ゲームが動いたことでさらにテンションはヒートアップする。バレンシアの球際の強さも増し、試合終盤さながらのオープン(あるいは荒れた)な展開を繰り広げたまま前半を終える。バレンシアのブロックのライン間、選手間の距離のバランスの良さが光った。その激しさは、総タックル数37に対し81%の成功率(バルセロナは21度のチャレンジに対し57%の成功率)、空中戦での勝率67%(バルセロナ33%)という数字にも現れている。
プランデッリ監督は、後半開始からパコ・アルカセルと入れ替わる形でバレンシアへやって来たムニルを投入して攻勢をかけると、バルセロナは51分にムニル、55分ロドリゴと立て続けに失点しあっけなく逆転を許す。
試合を通じ、70%のポゼッションを保ったバルセロナだが、46分~60分の間にそのポゼッションは60%を切っている。わずかなチャンスをモノにしたバレンシアの集中力の素晴らしさと、わずかなピンチに耐え切れなかったバルセロナの守備陣の脆さが浮き彫りにされた時間帯だった。
また、51分のムニルのゴールはアンドレ・ゴメスのボールロストから始まったものだが、このポルトガル人選手が終始ゲームから消えていたことはバルセロナにとって非常に頭の痛いところだろう。
ラキティッチの休養のためにスタメンに入ったゴメスだが、試合後の『アス』紙の寸評で「現時点でバルセロナの選手としてのスケールにない。インテンシティが大きく欠け、彼の売りであるボールキープもできていない。彼のボールロストが同点につながった」と酷評されている通り、古巣のファンの前で全くいいところが見せられなかった。