熊本での恩師との再会が転機に
高校卒業時にも地元のベガルタからオファーを受けているが、自分自身に対してまだ自信をもてなかったのだろう。シュミットは断りを入れている。それでも、日本人では稀有なサイズをもつゴールキーパーには、おのずと熱い視線が注がれてきた。
ピッチに立つことはなかったが、大学1年次から3シーズン連続でJFA・Jリーグ特別指定選手として川崎フロンターレに登録される。そして、当時のフロンターレで育成GKコーチを務めていた澤村公康氏との出会いが、シュミットにとって大きなターニングポイントとなる。
昨年6月1日。ラブコールを受けて期限付き移籍したロアッソで、GKコーチを務める澤村氏と再会を果たした。一時は21位に低迷し、J3への降格危機にあえいでいたチームを堅守で立て直し、最終的には13位に引き上げる活躍を演じるなかで、シュミットは澤村コーチと何度も話し合った。
「自分のなりたいキーパー像について、いろいろと話し合いをしました。それに関しては言うつもりはないですけど、それに向かって自分はやっていきたいと思っています。(ロアッソは)最初に活躍させてもらった場所だし、一生感謝していきたいですね」
シュミットが多くを語ろうとしない「それ」、つまり目指すキーパー像とは何か。以前はフィールドプレーヤーも顔負けするキックの技術と精度を誇る日本代表GK西川周作(浦和レッズ)を参考にしたいとしていたが、いまでは「そこまで意識していない」と言い切る点にヒントがある。
「もちろん西川さんのことはリスペクトしていますけど、自分のプレースタイルのなかで、それほどキックにこだわりたいとは思っていないというか。もちろん、そういう部分も備わっていればいいけど、自分としては動きの速さを、日本人で“でかい”と言われる人があまりもっていないような速さを、自分はもっと出していけると思うので」