「タイトルを獲る」楠神を突き動かした決意
シーズン開幕前、日本でキャンプを張ったWSWは、ジェフユナイテッド千葉との練習試合で連動した激しいプレスからのショートカウンターでゴールを奪う今季のベースとなりそうな形を何度も披露した。J2の控え組相手とはいえ、結果は3-0の圧勝。インテンシティの高さで千葉の選手たちに何もさせなかった。
カウンターを軸に戦うならば、楠神のような個の打開力を生かせるアタッカーが活躍しやすくなる。高いコンビネーションの質が求められる場面や、守備で体を張らなければいけない場面でも楠神は重宝されるだろう。
千葉との練習試合の後、楠神はWSW移籍を決めた理由をこう語った。
「ウェスタンシドニーには前から声をかけてもらっていたし、鳥栖で全然試合に出られていない状況で、環境を変えなければいけなかった。自分としてはずっとタイトルが欲しかったので、自分のチームでタイトルを獲るというのを目標にしている。もちろん自分がその中心となってやりたい」
WSWは2012年に設立されたAリーグの中で最も新しいクラブのひとつだが、過去4シーズンでリーグ優勝1回、ACL制覇1回を成し遂げ、グランドファイナルにも3度進出した(いずれも準優勝)、オーストラリアで最も「タイトルを狙える」場所でもある。
リーグ開幕から2試合を終えてチームは順風満帆と言えない状況だが、楠神個人としてはまずまずのスタートを切った。このままのプレーを続け周囲の信頼を確固たるものにすれば、WSWにとって“第二の小野伸二”になれる可能性を大いに秘めている。日本が誇るハードワークドリブラーの挑戦は始まったばかりだ。
(取材・文:舩木渉【シドニー】)
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