「アジアのバルセロナ」との賞賛
ザッケローニ監督は細かな指導を行っている。DFの体の向きが一般的な日本のやり方と違っていたり、ビルドアップの手順をパターン化するなど、ディテールにこだわりのある監督だった。ただ、細かく指導はするけれども「そのとおりにやらなくてもいい」と伝えていた。状況によって判断していいという余白を残している。アイデアは出すけれども絶対ではない。
各ポジションの第一人者である代表選手、すでにある日本のサッカーを尊重し、そこに監督のアイデアを加えながら整えていく。強豪国の代表チームでは珍しくない手法といえる。主力の多くはヨーロッパのクラブで活躍するようになり、そうしたチーム作りが有効な段階になっていた。
南アフリカ大会のチームに香川真司を加え、中澤佑二&田中マルクス闘莉王の後釜に今野泰幸と吉田麻也を据え、1トップに前田遼一を起用。だが、大幅なメンバー入れ替えはなく、岡田前監督の堅守に鋭い攻撃力を加える形でスタートする。
ようやくまとまった練習時間を確保できたアジアカップ期間中、急速にチーム作りを進めた。グループリーグではもたつきもあったが、最後はオーストラリアを破って優勝。「アジアのバルセロナ」と賞賛された。
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