チームを束ねるモンテッラ監督の緻密なマネジメント術
もちろん、これらの戦力を束ねるヴィンチェンツォ・モンテッラ監督の手腕も無視はできないだろう。フィオレンティーナではイタリアには珍しい華麗なパスサッカーを実現させた指導者だが、ミランのサッカーを短時間でそのように変えることはまだ出来ていない。ただそれ以外の部分で、彼は監督としての才覚を見事に活かしてチームを束ねている。
フィオレンティーナ戦では、堅実なカウンター戦術で古巣相手を封殺する。さらにキエーボ戦では、緻密な守備からカウンターを狙う相手に対し、高い位置からのプレスでボールを奪い得点を重ねて勝利した。
戦術が各選手に浸透するキエーボは、実はホームで1月から負けていない。格下相手に中途半端に攻めにかかり、カウンターで脆くも破れることの多かった最近のミランからは想像できない姿だ。
前述のロカテッリの起用に見るように、いきなり若手を潰さないようにしながら戦力として使っていくマネジメントも上手い。サッカー指導者としてのモンテッラの本質は、華麗なポゼッションサッカーの実現というよりも緻密な戦術立案とチームマネジメントにある。とにかく攻撃を志向しながら、まとまりのあるチーム作りが両立できる監督をミランはようやく引き当てた。
首位ユベントスと比べれば、戦力には依然雲泥の差がある。だが今のミランは一体感がある。間も無く完了するといわれる経営譲渡を前に、ユーベ戦で良い試合を見せられれば、真の復興に向けて弾みがつくことになるはずだ。
(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)
【了】