名参謀が残した2人の“置き土産”
まず戦力で言えば、純然とした新戦力は主力になりきっておらず、彼らの力でチームが変わったとは言えない。
セリエB得点王という実績を引っさげてペスカーラから獲得したジャンルカ・ラパドゥーラは、カルロス・バッカとの厳しいポジション争いに置かれている。またホセ・ソサも他の選手を押しのけてポジションを取るには至らず、モントリーボが故障した後のキエーボ戦も先発はならなかった。
その代わり、出戻りの選手が活躍している。本田とのポジション争いで先行しているスソは、半年間ジェノアでのレンタル生活で培われた勝負強さをそのまま新天地に持ち込んでいる。最近は得点に絡む仕事はさほど見せていないものの、攻撃のアクションに常に参与し、戦術的には欠かせない存在になっている。
ただ、重要な活躍をしている出戻りの選手はもう一人いる。アタランタのレンタルから戻ったCBのガブリエル・パレッタだ。クリスティアン・サパタの故障もあって駆り出されているが、プレーを続けるうちに安定。着実なカバーリングと粘り強いマークで、最終ラインを締める。特に第6節のフィオレンティーナ戦では、FWニコラ・カリニッチを完封するなど出色の出来を見せた。
実は彼らの活躍の陰には、ミランに長年貢献を続けた人物の存在がある。カルロ・アンチェロッティやマッシミリアーノ・アレグリらを助監督として支え続けたマウロ・タソッティである。彼はその後もクラブに残り、ミランから各クラブにレンタルされた選手専門のオブザーバーとして働いていた。
そして彼はパレッタについては、アタランタでの活躍ぶりを評価してチームに残すようフロントへ進言していたのだという。タソッティはアンドリー・シェフチェンコ監督の誘いでウクライナ代表の助監督となるが、パレッタはいわばその置き土産ということだ。