就任後わずか2日で辞任の“エル・ロコ”
ラツィオを1試合も指揮することのなかったマルセロ・ビエルサ氏(写真はマルセイユ時代のもの)【写真:Getty Images】
マルセロ・ビエルサ(ラツィオ)
“エル・ロコ”(スペイン語でクレイジー)の愛称で知られるマルセロ・ビエルサ。文字通りサッカーマニアとして知られるアルゼンチン人指揮官だ。
これまで監督を務めた場所では常に攻撃的でスペクタクルなフットボールを展開しており、ラツィオの監督就任が決まると、「イタリアの地でもビエルサのサッカーが見られるのか」という期待が高まった。だが就任発表から2日後に、まさかの辞任が発表された。結局、“エル・ロコ”は1試合もラツィオの試合を指揮することはなかった。
ビエルサが辞任の決断を下した理由は「要求した選手が誰1人獲得されなかった」というもの。実にビエルサらしい理由だ。ビエルサは極めて真面目な人間だ。真面目すぎると言ってもいい。
ビエルサの真面目過ぎる人柄を物語るエピソードがある。アスレティック・ビルバオ時代、練習場の工事が遅れていたことに腹を立てたビエルサは、工事担当者と取っ組み合いになった。そこで「ビエルサに殴られた」と主張する工事担当者は、裁判所へ訴えを起こそうとするも、クラブが圧力をかけて制止。立場を守られたはずのビエルサだったが、ここから“らしさ”を発揮する。「彼には私を訴える権利がある」と、工事担当者に対するクラブの圧力を非難した。常人離れした真面目さであり、これこそが“エル・ロコ”たる所以である。
そんなビエルサからすれば、約束を守れないことは許せないのだ。ビエルサを監督として迎え入れるクラブはそれを頭に入れておかなければならない。「出来もしない約束などするな」と。
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