選手の将来像を見定める難しさ
私は、今夏のリオデジャネイロ五輪、U‐23日本代表の10番を背負った中島翔哉(FC東京)の言葉を思い出す。東京ヴェルディのアカデミーで育ち、トップに昇格した中島は、指導者の理解を得られず、うまくかみ合わない時期があった。
指導者との関係を振り返った中島は、一切恨みがましいことを言わなかった。「納得できること、できないこと、あらゆる出来事が自分の成長につながった。僕はすべての指導者に感謝しています。出会えてよかった」。常に前だけしか見ていない中島らしいと思ったものだ。結局、甘美や苦渋をどう消化するかは、その人次第ということか。
山本のインタビューを終えたあと、鹿島アントラーズの椎本邦一スカウト担当部長と話す機会があった。
「盛岡商で10番を背負っていた頃から知っていますけど、まさかプロではサイドバックとして生き、鹿島でレギュラーを獲得しようとは。当時の姿からはまったく想像できないです」
長年、数多くの選手の成長過程を観察してきた目利きのスカウトマンをもってして、山本の将来像はイメージの埒外にあった。その選手が、いつ、どんな形で花を咲かせるかを推し量るのは、かくも難しさが付きまとう。特に若年層の選手を見定める際は、予断は禁物ということなのだろう。
2016シーズン、J1の2ndステージ、鹿島は中位に甘んじる。序盤の出遅れと真面目一徹の石井正忠監督が立場を危うくしたのが響いた。
だが、来たる11月下旬のJリーグチャンピオンシップには、きっちり照準を合わせてくる。なぜなら、それが鹿島だからだ。常勝軍団の左翼を支える山本は、初の日本一のタイトルを携え、来季大台の10年目のシーズンに向かうつもりに違いない。
(取材・文:海江田哲朗)
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