2つ目の分岐点:同点ゴールを生んだコーナーキック
一方の西川は、予想に反しての失点にもかかわらず浦和にはポジティブなゴールだったと語った。「失点してもみんな慌てていなかったので、大丈夫だなと思いました。ピンチも流れの中から何度かありましたけど、このチームには2失点目をしなければ絶対に逆転できる力があると思っているので、リーグ戦だったり準々決勝や準決勝の経験が生きました」と、1点失っても気持ちを落とさなかったことでチームの強さを確認したという。そしてこのポジティブさが次のゴールを生んだ。
それは東口が「勝負の分かれ目」に挙げた、浦和のゴールシーンだった。76分、途中出場でピッチに立ったばかりの李忠成が柏木陽介のコーナーキックに頭で合わせてゴールネットを揺らした。この1点がなければPK戦にもつれることもなかったはずの1点だ。
ただのセットプレーからの失点に思えるが、状況を整理するとG大阪にとって非常に難しい場面だったことがわかる。浦和はこの時点ですでに交代枠をすべて使い切っており、身長の低い武藤雄樹と高木俊幸に代わって、ともに180cmオーバーのズラタンと李忠成がピッチに立っていた。
彼らがコーナーキックのためにペナルティエリアに入ることでマークのずれや身長のミスマッチを誘発する。実際に李のマークについていた米倉恒貴は身長176cmで、ミスマッチが起こっていた。完璧な形でヘディングされてしまったのはそれだけが原因ではないが、ひとつの不安要素になりうる。
また、東口は別のポイントでこの失点を悔やむ。「外されたというよりは自分の判断が……飛び出すなら触りにいかなければいけなかったし、それが中途半端になってしまった。その前に止めていただけに、すごくもったいない失点だった。そこが勝負の分かれ目だったと思う」と、飛び出した自分のポジショニングに言及した。
もっと細かい局面に限定すれば「無理やり出たら先に触られた感じ」だという。実際に東口はこの試合で浦和のサイドからのクロスを強く警戒していた。どのクロスにも早めにリアクションして味方に任せるか自分でいくか、ある程度予測した上で積極的に飛び出してキャッチしていた。
「浮いたボールはもちろん狙っていましたし、切り込まれてゴールを横切るボールも気にしていた。そこを通されたら確実に入れられるようなシーンになってしまう」
浦和は両サイドからのクロス、あるいはサイドから切り込んで中央へボールを供給する形が多かった。前線は3トップに近い形で、サイドの選手がボールを持てば確実に全員ペナルティエリア内まで侵入してくるため、GKから見るとニアサイドからファーサイドまで幅広くターゲットをケアしなければいけない難しい状況になる。それを警戒するあまり、クロスに対するターゲットの身長が高くなったことで中途半端な対応になってしまったのかもしれない。