「私は練習で頑張るものにチャンスを与える」
その間、実は長友も実戦復帰をしていたのだが、9月22日に行われたELのハポエル・ベエルシェバ戦ではチームに貢献を出来なかった。前半こそ積極的な攻撃参加を試み、正確なクロスで得点チャンスを演出していたものの、後半ではドリブルを仕掛けてくる相手FWの対処に戸惑ってファウルを繰り返したのち、そのうちの一つが追加点となる直接FKに繋がる始末。長らく実戦から遠ざかっていた不利はあったとはいえ、これがデ・ブール監督へのアピールに響いてしまった可能性もある。
ただ、デ・ブール監督は決して長友に扉を閉じたわけではなかった。10月2日に行われた7節のローマ戦では、アンサルディに代えて後半17分から出場させた。左サイドでスピードのあるモハメド・サラーやブルーノ・ロペスとの対処に苦しんでいたサントンを右へ回し、左サイドへ。その後はスピードを活かして裏に出ようとする相手を抑え、さらに一度ブルーノ・ペレスをドリブルで抜き去りクロスを通した。そうしてチームに活力を与え、先行を許していたインテルは長友投入後に同点に追いついている。
「私は練習で頑張るものにチャンスを与える」。最近はイタリア語で直接記者会見に応じているデ・ブール監督はそう語っていたが、とりあえずそのルールは長友にも適用されているということだ。戦力外の立場を覆した昨季のように、ここから立場の挽回がなるように期待したい。
ただ、のんびりと構えてはいられない。インテルはすでに、デ・ブール監督と折り合いが合わなかった新戦力ジャネル・エルキンを夏の段階で放出している状態。そしてピエロ・アウジリオSDは「冬の移籍市場は難しいが、新たなサイドバックを獲得する可能性は排除しない」と発言している。
イタリアの報道ではマンチェスター・ユナイテッドでポジションを失っているマッテオ・ダルミアンに白羽の矢を立てているともっぱらの噂だが、新たなライバルの加入までに評価を高めることができるかにも注目だ。
(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)
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