FWからMFへ。迫られる「転向」の決断
もっとも現状のままでは、いざという時に頼れる「控えの重鎮」が精一杯だ。復活への鍵は、定位置を競う「転向先」の一本化。自ら「どこでもこなせる」と言っていたように高度に万能だったルーニーだが、体力とともに万能レベルも低下している今、レギュラーとしての生存を図るにはポジションを絞らなければならない。
クラブで控え要員では代表での先発扱いは望めないだけに、マンUでのポジション争い参戦が必要だが、照準を定めるべきは自身も昨季に意識した中盤中央か? 当初は「MFだとは思わない」とルーニーを評していたモウリーニョだが、既にそのMFとしても起用した前歴ができた。
中盤のキーマンとなるべきポール・ポグバの攻撃力を最大限に生かすべく、基本システムが4-2-3-1から4-3-3に変われば、アンカー役の手前でポグバと組み、攻守のバランスを意識しながら機を見て自分も攻め上がる3センターの一員としての姿には現実味があるように思える。
ルーニーは、「爆発的」だった若い頃から一貫して「献身的」な選手であり続けている。クラブでも代表でも、チームの必要性に応じて最前線から中盤深部まで、複数の役割を担いながら試合を重ねてきた。その貢献への見返りとして、トップレベルでのラスト数年を懸けた「定位置争い」への挑戦権を与えても罰は当たらないだろう。
マンUは来夏にアメリカか中国に売却の用意があるとの噂も出始めたが、チャレンジに成功すれば、メディアを含む国民が信じているように、まだ通用する実力を備えているはずなのだ。「どこでもいける万能なワールドクラス」から「どこでも争えない不要なベテラン」としての代表キャリア終焉こそ、サウスゲートではないが「酷」というものだ。
(取材・文:山中忍【ロンドン】)
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