「時に彼への非難は酷に思える」
翌朝、「代表引退はない」とした本人の発言を受けて、「まだ終わってはいない」という路線が大半を占めた国内各紙の見出しは、ルーニーの代表キャリアが終わったとは思いたくないという、メディア側の感情をも反映しているように感じられた。イングランド人記者も、素顔は代表ファンの国民。心の底では、ルーニーならばMFとしても通用すると信じている者が多いように思えてならない。
酷評は、その期待の裏返し。マンUでも代表でも中盤でインパクトを示すことができなければ、例えば各紙で及第点はもらっていた10月8日のマルタ戦(2-0)でも、裏切られた心境で「もはや不要」とまで厳しく意見してしまうのではないだろうか?
国内メディアが、昨季マンUでのセンターハーフぶりを褒め讃えてから、まだ半年ほどしか経っていない。続くEURO2016でも、グループステージ最終節スロバキア戦(0-0)では温存策を採ったロイ・ホジソン監督(当時)にルーニー先発を求める意見が多かった。
試合中には、ファンもスタンドとソーシャルメディアでルーニー投入を要求。今回のスロベニア戦にしても、サポーターから「ルーニー!」コールが起こるまでには、試合開始から2分とかからなかった。
正監督の候補者でもあるサウスゲートも、采配2戦目でベンチを命じたベテランを見捨てているわけではない。初陣で中盤深部を任せたマルタ戦後には、「時に彼への非難は酷に思える」としてルーニーを擁護している。若手の多いチームで経験豊富な大物に期待する部分はあるだろう。続くスロベニア戦後半の投入は、「周りを落ち着かせる狙いだった」と説明してもいる。
【次ページ】FWからMFへ。迫られる「転向」の決断