過保護的な施策が真の意味での育成につながるのか
今回の外国籍選手の登録枠拡大が決定に至ったのも、イギリスの動画配信大手パフォーム・グループが提供するスポーツのライブストリーミングサービス『DAZN(ダ・ゾーン)』と締結した、2017シーズンから10年、総額約2100億円にのぼる巨額な放映権料契約を抜きには語れない。
原資のケタが異なるほどに増えたことを受けて、必然的にJリーグから各Jクラブへの均等分配金や優勝賞金も大幅に増える。外国籍選手の獲得を含めて、強化に回せる予算が増えることを受けて議論が再燃。村井チェアマンも「世界選抜とまではいかないまでも、若いけれども将来有望な選手を含めて、多様性のあるリーグに変わっていけば」と将来的な青写真を思い描く。
Jリーグの創成期を振り返れば、ラモン・ディアス(横浜マリノス)やアルシンド(鹿島アントラーズ)、ドラガン・ストイコビッチ(名古屋グランパス)といったビッグネームが特に攻撃陣を中心として集結。結果として日本人のディフェンダーが鍛えられる好循環を生んだ。
ひとつのJクラブが保有できる選手数が限られている状況で外国籍選手の登録枠を拡大すれば、それだけ日本人選手に“しわ寄せ”がくる可能性は確かに否定できない。しかし、過保護的に出場枠を保証することが、果たして真の意味での育成につながるのか。
アジアとヨーロッパとでは置かれた環境が異なるかもしれない。それでも、逆転の発想で外国人枠を撤廃し、自国の有望選手をピラミッドの底辺から育成できるシステムを10年と経たないうちに完成させ、ゲルマン魂とフィジカルの強さを前面に押し出したかつての質実剛健のスタイルから完全に脱皮。再び世界の頂点に立ったドイツというまたとない手本がすぐ身近にあることを、忘れてはならないはずだ。
(取材・文:藤江直人)
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