リピーターにならなかったライト層
一定の成果を残した一方で、たとえば今シーズンの観客動員数は決して見逃せない変化が生じている。昨シーズンの同時期に比べて約5万3000人増となっているが、新設の市立吹田サッカースタジアム効果で約13万3000人増のガンバを除けば、全体的には横ばいどころか減少に転じている。
Jリーグで屈指の観客動員数を誇る浦和レッズにしても、1試合の平均観客数は昨シーズンから約3000人も減少。TBS系列の地上波で生中継された1日のガンバとのセカンドステージ第14節は、首位攻防戦だったにもかかわらず、視聴率は1パーセント台に甘んじた。
これらの現象が何を意味するのか。賛否を含めてメディアで報じられ、目新しく映った2ステージ制の効果もあってスタジアムへ足を運んだ、あるいはチャンネルを合わせた新規のファン、いわゆるライト層がリピーターにならなかったという偽らざる現実が、目の前ですでに進行していることに他ならない。
村井チェアマンは理事会後の会見で、パフォーム・グループから得る巨額の放映権料を「我々に投資していただいたという認識」ととらえたうえで、Jリーグが進むべき道をこう説明している。
「Jリーグとしては『リッチになった』という観点ではなく、期待値に対してそれ以上の成長や魅力度を増していくことで、彼ら(パフォーム・グループ)の投資に応えていく必要があります」
J1の大会方式変更やクラブへの配分金の変更だけではない。折り返し点で創設するサマーブレイク期間、外国籍選手の登録枠拡大、東京五輪世代の育成促進など、理事会で承認された施策は“あるべき姿”である1ステージ制に立ち返ったなかで、Jリーグがピッチの内外で発展・成長を遂げていかなければいけないという不退転の決意が、2016年10月12日こそが再出発の瞬間だという強い意思が込められている。
(取材・文:藤江直人)
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