なくなった2ステージ制継続の大義
じり貧状態だったJリーグの将来に危機感を覚え、苦渋の決断のなかに不退転の決意を込めたからこそ、2013年秋に2ステージ制導入を決めた当時のJリーグの大東和美チェアマンは「少なくとも5年は続けたい」という言葉を残してもいる。
しかし、荒波を覚悟で港を出てから2年とたたないうちに、Jリーグはある意味での“理想郷”にたどり着いた。状況を劇的に変えたのはイギリスの動画配信大手パフォーム・グループが提供するスポーツのライブストリーミングサービス『DAZN(ダ・ゾーン)』と締結した、2017シーズンから10年、総額約2100億円にのぼる巨額の放映権料契約に他ならない。
原資のケタが異なるほどに増えたことを受けて、必然的にJリーグから各Jクラブへの均等分配金や優勝賞金も大幅に増える。1ステージ制へ回帰する動きが明るみになった9月中旬。Jリーグの村井満チェアマンは「大会日程や大会方式に関して、制約なしにあるべき姿で議論できるようになった」と、2ステージ制を継続していく大義名分が実質的になくなったことを暗に認めていた。
あるべき姿とは、もちろん1ステージ制をさす。ホーム&アウェイ方式で2回戦総当たりのリーグ戦を長丁場で開催し、もっとも安定した力を発揮したチーム、要は最も多くの勝ち点を獲得したチームが美酒に酔う。着地点は決まっていて、来シーズンのスケジュール作成や自治体管轄になっているケースが多いスタジアムの確保を考えれば、10月の月例理事会が大会方式の変更を決める最後のチャンスでもあった。
迎えた12日。東京・文京区のJFAハウスで行われた理事会で、2017シーズンからJ1を1ステージ制に戻すことが正式に決定した。すでに実行委員会で合意に達していた事項を全会一致で承認。2015シーズンから導入された「2ステージ制+チャンピオンシップ」は今シーズン限りで、わずか2年のチャレンジをもって幕を閉じることになった。
変更に至った最大の理由を、村井チェアマンは「日程的な限界」に帰結させている。2ステージ制導入が決まり、2015シーズンのスケジュールが作成された直後に、毎年11月に開催されるACL決勝が中立地の一発勝負からホーム&アウェイで、しかも週末に行われることになると決まった。