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日本代表 8年前

【識者の眼】ハリルJが披露した戦い方のベース。相手に応じた戦術。機能性を優先することのネック

text by 河治良幸 photo by Getty Images

戦術的機能性を優先することにより生じるリスク

「ここからの戦いに向けたベースを見せられた試合」と酒井高は語る。イラク戦の翌日から5日間でオーストラリア対策を選手に伝え、試合で途切れず実行するまで高めた手腕に疑いの余地は無いが、攻撃面での質や精度の部分で大きな課題は出た。選手交代の部分でも、セットプレーの守備や疲労度、また同点の状況で動きにくかったとはいえ、状況に適した有効なカードを切っていくべきだ。

 残りのレギュレーションを考えてもアウェイのオーストラリア戦で勝ち点1は悪い結果ではないが、ここから6試合で勝つべき試合を取りこぼさない保証はどこにもない。

 明確なのはハリルホジッチ監督がこれまで取り組んできたベースの部分を強化しながら、相手に応じて“相手のストロングポイントを消し、ウィークポイントを突く”戦い方をしていくということだ。

 この指揮官にとってゲームの主導権とはボールのポゼッションではなく、相手の良い部分を出させず術中にはめているか、さらに相手の嫌がる形で得点チャンスを生み出せるかだ。

 残りの最終予選はまた難しいものになるが、オーストラリア戦で示された主力の戦術実行力を考えると1つネックになるのが、新しい選手の起用法だ。タレント的にはまだまだ代表でテストされるに値する選手はいるはずだが、組織として高い機能性を発揮することが優先されれば、その機能性を一時的にも低下させうる新戦力の組み込みは難しい判断が要求される。1年半でベースを作り、相手の対策を入れた戦いの中で、良い意味での競争は発生するのか。

 アルジェリア時代は約3年間で新陳代謝もあったが、選手発掘のバックボーンが異なるし、フランスリーグでプレーする選手を戦術的にフィットさせやすかったこともあるかもしれない。今回のメンバーにはクラブでポジションを掴むように伝えたそうだが、親善試合をはさむ11月の選考でより方針は見えてくるはずだ。

(取材・文:河治良幸【メルボルン】)

【了】

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