困惑する香川。スタイルの使い分け、選手とのズレを解消すべき
オーストラリア戦後半は「強くない日本」を印象づける顕著な例だったかもしれない。日本の決定機らしい決定機は29分の小林悠(川崎)のゴール前でのヘッド、40分の原口の抜け出しに浅野拓磨(シュツットガルト)が飛び込んだ得点機くらい。その全てがカウンターだった。9月のタイ戦(バンコク)以来のトップ下で先発しながら得点に絡めなかった香川真司(ドルトムント)は、この厳しい現実に困惑を隠せなかった。
「圭佑君だけを前に残しながらも、中盤からディフェンスラインの選手たちが最終ラインくらいまで下がっちゃった。それは分かっていたけど、そこから押し上げていくには前線との距離もありすぎた。
攻撃は元気から拓磨であったり、サイドを中心に2~3本のカウンターしかチャンスがなかったし、そこで起点を作る以外に筋道が見えなかった。チームとしてどうやって攻撃していくかという意味では大きな課題が残ったと思います」と前線で孤立したエースナンバー10は苦しい胸の内を吐露するしかなかった。
2014年ブラジルW杯で惨敗した日本に新たな戦い方が求められているのは事実。アジア最終予選のうちからタテへの意識を強めていかなければ、いざ世界に出た時にそのスタイルを実践できないのも確かだ。
しかしながら、アジア相手ではもう少しボールを保持し、カウンターとポゼッションの上手い使い分けをしてもいいはず。その比率を今一度、指揮官と選手たちの間でキッチリ詰めていくべき時に来ているのではないか。
日本がアジアを確実に勝ち抜こうと思うなら、その作業を怠ってはいけない。今回、浮上した疑問をきちんと直視し、いち早く解決の方向へ持って行かなくてはならない。
(取材・文:元川悦子【メルボルン】)
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