“次代のエース候補”ユリッチでケーヒル依存症克服か
さらには、イラク戦では試合の冒頭から、サウジアラビア戦では試合の後半から中盤をダイヤモンド型に配する4-4-2のフォーメーションでのプレーも見せた。その際は、ロギッチは司令塔のポジションに陣取り、左右のハーフをムーイともう一人の技巧派MFマッシモ・ルオンゴ(QPR)が務める。
自国優勝を果たした昨年のアジアカップの活躍で一躍スターダムに駆け上がったルオンゴ。足技、ドリブルでチーム一番のスキルを誇る彼の台頭は、サッカルーズの戦いぶりの幅を大きく広げた。ここまで上げたムーイ、ロギッチ、ルオンゴの3人に加えてあと1人、ボランチに彼らと同世代か若い世代から代表に定着して活躍を見せる選手が現れれば、使い古された表現だが、豪州版新世代の“黄金カルテット”結成が見られることになるかもしれない。
若手の有望な人材への中盤偏重は、日本とも同じ悩みかもしれないが、前線でようやく次代を背負うストライカーのひとり立ちが見られつつある点では、オーストラリアが一歩先を進んでいる。
長年、次代のエース候補として期待されチャンスを与えられるもなかなか結果を出せずにいたのが、トミ・ユリッチだ。しかし、二度目の欧州挑戦も2季目に入り、ようやく本来の素質を開花させつつある。この最終予選に入るまでは、代表での戦績は16試合2得点というFWとしては寂しい数字だったのが、この最終予選の3試合の厳しい舞台で3試合2得点と、その存在を大いにアピール。ゴールを積み重ねながら、着実にチーム内での存在感を増している。
彼が前線で今まで以上に頑張れるようになったことで、相対的にケーヒルへの依存度は下がった。その意味で、冒頭に触れたサッカルーズの「ケーヒル依存症」克服の最も直接的な功労者は、この25歳のストライカーということになる。