ケーヒルだけではない、オーストラリア代表の要注意選手
「サッカルーズで警戒すべき選手は?」という問いを投げかけられ、「ティム・ケーヒル」とばかり答えているのも芸がない。
実際、ケーヒル(メルボルン・シティ)が警戒すべき選手であることには違いないが、だからと言って他に警戒すべき選手がいないわけではない。むしろ、ここに来て、サッカルーズの宿痾とされた“ケーヒル依存症”は、かなりの快復傾向にあり、そこには若手の躍動が見られる。
一番の注目選手には、勢いという意味でトム・ロギッチ(セルティック)を挙げたい。長らく将来を嘱望されてきたその才能が、ようやく欧州の地で完全開花。190cm近い長身でダイナミックにボールを運び、繊細なタッチでパスも長短使い分ける。周りも良く見えて自らも得点に積極的絡むスタイルは、オーストラリアに今までに類型を見ない“ニュータイプ”だ。
キャンベラ出身のロギッチは、地元では早くから名の知れた存在で10代ではフットサルーズ(オーストラリアのフットサル代表)にも選ばれた技巧派。20歳になった直後、当時のグラアム・アーノルド(元オーストラリア代表監督、現シドニーFC監督)が指導、若手の育成に定評があったセントラルコースト・マリナーズ(CCM)に加入。すぐにAリーグで出番を掴み、確実な成長を見せた。
しかし、22歳でセルティックに移籍して欧州に雄飛を果たすも、ケガに悩まされるなど完全なブレイクまでは足踏みをする時期が続いた。そんなロギッチは昨季、スコットランド随一の名門のレギュラーに定着して大活躍。遂に本格的なブレイクを果たした。そのクラブレベルでの活躍と軌を一にして、代表での出番も安定し、今に至る。
それでも、そのロギッチの立ち位置は、サッカルーズの中でまだ絶対的なものとは言えない。というよりも現在のサッカルーズに不可侵の“聖域”が存在しなくなっている。あのケーヒルでさえも先発が確約されておらず、ここ数試合はベンチスタートが続き、アンジ・ポスタコグルー監督は「ケーヒル=スーパーサブ」という起用法をほぼ固定化している。