悪くなかった柏木だが、デュエルでは厳しい面も
「なるべく前目でポジションを取って、トップ下にキヨ君がいたから、なるべく近い位置でやれたらいいなと思っていました」
後半29分にはDF森重真人のフィードを前線の左ワイドで受けた酒井高徳から清武にボールがつながったが、清武がうまくコントロールできず、カミルのタックルでボールを失ってしまう。しかし、すぐ後ろでフォローした山口がボールを拾い、右の長谷部に展開したところから、クロスに本田がヘッドで合わせるシーンが生まれた(惜しくもポストに当たりゴールにはならなかったが)。
同ポジションでスタメン出場した柏木は長短のパスでワイドな攻撃を演出し、守備でも精力的にボールを追った。だが“デュエル”と言われる1対1で相手のプレーを限定はできても潰すことはできず、長谷部とのコンビはセカンドボールで劣勢だった。
しかも後半には全体が間延びし、よりそうした悪い状態が起こりやすくなっていたのだ。こうした山口の特性はスタメン出場でも発揮できるものだが、後半途中からの出場でより明確な形で表れることとなった。
そうは言っても、もし後半アディショナルタイムのゴールが無かったら、こうして戦術的な意図と効果を記事にすることも無かっただろう。劇的なゴールで日本の救世主となった山口は守備から攻撃にかけて、存在価値を証明することに成功した。
もっとも山口は正確なパスを備えるものの、柏木のようなゲームメークのエキスパートではない。中盤のオーガナイザーであるキャプテンの長谷部を軸とすれば、当面は相手や時間帯に応じて柏木をはじめとしたゲームメーカーの選手と使い分けていくことになるだろう。
(取材・文:河治良幸【埼玉】)
【了】