要注意人物をどのように対策すべきか?
もう1つが一度ワイドな位置でボールを持ったところから、中に素早くリターンして周りの選手にフリーで前を向かせる形だ。
そこからアブドゥラミールやアブドゥル・ザフラがミドルシュートやラストパスを狙っていく。あるいは中央の選手を飛ばして、逆サイドのアリ・フスニあるいはアリ・アドナンが受けて、相手センターバックと右サイドバックの合間などに生じるスペースを突いていく。
大型選手でテクニックも高いヤシーンは存在が目立ち、イラクの攻撃陣も頼りにしている。そのため相手ディフェンスの意識も集まりやすいが、その分も周りの選手はフリーになれる可能性が高まる。堅守からの速攻が基本となるイラクにおける主要な起点なのだ。
日本としてもヤシーンが高い位置でボールを持つ状況をなるべく作らせない様にする必要があるものの、あまりに気を取られて周囲の選手をフリーにさせないようにバランス良くディフェンスしていくべきだ。酒井高徳か長友佑都、あるいは太田宏介。基本的にマッチアップの関係になる左サイドバックの役割が重要になるが、左のボランチも常に関係してきそうだ。
その一方でヤシーンはイラクの組織的なディフェンスを形成する1人でもある。イラクが守勢になれば攻撃に転じた時のポジションも低くなる。イラクは鋭い速攻を武器とするが、一発のロングカウンターはそこまで得意としておらず、そこに特化した攻撃をしてくることも少ない。相手に押し込まれている時間帯はヤシーンもそれほど脅威な存在にはならないのだ。
つまり効果的な攻撃を繰り返すことができれば、それだけヤシーンの危険性も減るということ。守備の警戒を緩めるべきではないが、攻撃で主導権を握ることによって、相対的にヤシーンを起点としたイラクの攻撃を制限する効果は期待できる。そうした攻守の関係も勝負のポイントとして注目したいところだ。
(文:河治良幸)
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