FAにも落ち度。過去の前例を活かせず
但し、FAにも落ち度はあった。賄賂疑惑騒動の過去を持つアラダイスであれば、余計に今年7月の監督指名時に忠告を与えておくべきだった。その結末が辞任であれ解任であれ、イングランド代表には「強欲」と顰蹙を買った監督の前例が複数あるのだ。
ドン・レビーが2万ポンド(約280万円)の年俸アップでUAEに去ったのは1977年。98年にはグレン・ホドルがフランス大会での暴露本を出版。06年W杯前にはスベン・ゴラン・エリクソンが、『ニューズ・オブ・ザ・ワールド』紙のおとり取材でアストンビラの監督職に興味を示し、続くドイツ大会前には、ファビオ・カペッロが『カペッロ・インデックス』なる選手評価システム絡みのビジネスに手を染めた。
今回の「アラダイス事件」による被害者と言えば、2ヶ月程度の超短期で新監督を失った代表チームと、そのファンである母国民になる。アイスランド戦でのEURO2016敗退で嘲笑されたイングランドは、ピッチ外でも世界の物笑いの種になってしまった。『BBC』のインタビューで、元代表エースのアラン・シアラーが「一連の出来事全てに怒りを覚えている」と憤慨するのも無理はない。
U-21代表を率いていたガレス・サウスゲイトによる、年内残り4試合の暫定指揮は無難な選択ではある。
世間で不要論が強まるウェイン・ルーニーの扱い、ハリー・ケインの負傷欠場といった厄介な問題はあるが、幸い、担当する4試合中のW杯予選3試合ではスコットランドが最も手強いと思われる程度で、組分けに恵まれた予選グループにいる。正監督昇格へのオーディションと位置付ければ暫定指揮は更に有益ということになる。