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アラダイス退任に見る監督人事の“深い闇”。おとり取材で暴かれた“愚行”とFAの過失【現地記者解説】

text by 山中忍 photo by Getty Images

あまりに愚かな言動。「夢の仕事」も67日間で幕

 加えて、問題のミーティングは旧知の代理人を介してアレンジされたもので、いきなり謎のビジネスマンの誘いに乗ったわけではない。そして、全てはプライベートと認識した上での発言。数少ないアラダイス同情派に言わせれば、辞任に追い込まれる絶対的な理由は1つも見当たらないということになる。

 しかし、全ては「愚か」の一言だ。この点は本人も認めている。雇い主であるFAが、名誉ある代表監督として弁解も続投も不可能と判断するモラル的な理由としては十分だ。

 おとり取材というと聞こえは良くないが、今回の『テレグラフ』紙による取材は最大8名のプレミアリーグ監督を含む賄賂疑惑に迫るという、内容も意義もある類い。単なる話題性欲しさでひっかけたわけではない。

 そもそもアラダイスは、移籍ビジネス関連の話など自ら敬遠しているべき人物のはずだ。罪は問われなかったとはいえ、10年ほど前にFAも調査に乗り出した賄賂疑惑騒動で、当時は代理人として活動していた実子と共に渦中の人となった過去を持っているのだから。

 その上、今回は基本給だけで年間300万ポンド(約4億2000万円)の報酬を得る代表監督の職に就いていた。しかも、候補止まりだった2006年の監督交代時から10年越しで手に入れた「夢の仕事」に就いていたはずなのだ。

 にもかかわらず、1度ならず2度までも記者扮する実業家との会合に足を運び、計4時間にも渡って物議を醸す発言を行っている。いずれも軽い気持ちで口が滑ったわけではなく、ミーティングの席で考えて述べた言葉だ。

 その1つである選手の第三者保有禁止に関する「抜け道アドバイス」は、移籍ビジネスにおける不透明さを弱めて誠実さを強めんとするFAを敵に回すような行為だと言える。総裁としてのウィリアム王子に対する批判も同様。FA役員は英国王室との関係に誇りを持っている。

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