「イブラ・ロス」の影響は小さくない
この症状は疲労性のものらしく、「監督にアピールしようとハードに練習しすぎたためではないか」という憶測も飛んでいるが、リヨンでの駆け出し時代をベン・アルファとともに過ごした旧友はサッカー情報サイトFOOT MERCATO上で、実は勤勉なベン・アルファの一面を明かしている。
「エメリ監督には彼なりの哲学があるんだろう。けれど、ハテムが練習をおざなりにしているというような報道を耳にするたびに笑ってしまうよ。僕は彼を身近で見ていたけれど、彼がいかに人の見ていないところで練習をやっているかを知っている人は少ない。彼と同じくらい練習している選手は、リーグ1でプレーしている選手の4分の1もいないんじゃないかな」
これはただの邪推ではないかもしれない。
ベン・アルファ以外にも、メルカート最終日に古巣チェルシーへ舞い戻ったセンターバックのダビド・ルイスは、プレシーズン中に「ヒエラルキーはチアゴ・シウバ、マルキーニョス、ダビド・ルイスの順」というエメリの方針を知ってPSGを去ることを決めた。
前任者のもとでは絶対スタメンだったマテュイディもエメリから評価されておらず、アーセナル戦ではいきなり左ウィングで使われるといった起用法にも困惑し、PSGを去るのは時間の問題と言われている。
またエメリは、「選手全員に競争を課す」という方針を打ち出し、これまでの主力にも一切のアドバンテージはないことを明確にしたことで、一部の選手からは不満の声がもれているという話も聞こえてくる。
そしてやはり、ここ数年チームの中心にいたイブラヒモビッチが抜けた穴、「イブラ・ロス」は小さくない。エメリは自分の哲学に基づいてPSGを自分のチームに変革しようとしている。今シーズンが終わる頃、その成果はどういう形で現れているだろうか。
(取材・文:小川由紀子【パリ】)
【了】