「彼はドリブルばかりしている」
昨季17得点を挙げてニースの4位という好成績に大きく貢献、フランス代表にも復帰して、一躍脚光を浴びていたベン・アルファの獲得には、シンボルとなれるフランス人をクラブに置きたい会長のマネージメント戦略が見え隠れするのだ。
しかし純粋にスポーツ的戦略のみでメンバーを選んでいるエメリとしては、ベン・アルファを外すことには正当な理由がある。報道陣からの「なぜベン・アルファを使わないのか?」という執拗な問いに、第5節のカーン戦前の会見で彼はその理由を明言した。
「彼を呼ばないのはベストの状態ではないから。そもそも太りすぎだ。招集の話は彼が余分な19キロを落としてからにしようじゃないか。それまでは、よりコンディションの良い選手を使う。
実際、彼の馴れなれしい態度も好ましくない。昨日の練習ではわたしに股抜きをしかけてきたが、そういう態度は感心しないね。とはいえ、彼に対してとくに反感を持っているというようなことはまったくない。それと、彼はドリブルばかりしているから、もっとチームプレーを意識するようにと話した……」
つまりオーバーウェイトで、ディフェンスをおろそかにし、ドリブルなど個人プレーに走ってチームプレーをしない。コンディションとプレースタイルの両方でエメリは彼に納得していないということだ。
ニースでピュエル監督がベン・アルファをうまくこなせていたのは、彼にディフェンスを求める、個人プレーを制限する、といったことをしなかったからだ。ひらめきでプレーする天才肌のこの選手にそんなことを強いても土台無理。ならば彼の能力を引き出せるやり方でプレーさせ、チームがその恩恵を得ることを選択する。それがピュエルの操縦法であり、見事成功してベン・アルファは大活躍した。
【次ページ】CLで5試合ぶりにメンバー入りするも負傷欠場