群を抜くブッフォンの安定感
同じようなシーンとして思い出されるのがスペインGKデ・ヘア。イタリア戦ではFKをかき出すことができずに先制ゴールを献上してしまった。デヘアは他に真似ができないスーパーセーブを見せることもあったが、クロアチア戦でバックパスの処理を誤ってあわや失点という大ピンチを招いたりと軽率なミスも目立ったのが残念ではあった。
最後尾に控えるGKは、味方を安心させる存在であることが大切だ。その点でイタリア代表GKブッフォンは群を抜く。
いくつかのシーンが紹介されたのだが、例えばクロスボールに対する反応。とにかく最初のポジショニングにミスがなく、相手の狙いを読み切ってスムーズに落下点に移動するので、誰よりもタイミングよくボールへとアプローチをすることができる。ボールをキャッチしてからも何事もなかったかのようにクールに次のプレーへと移行していく。経験に裏打ちされた安定感のあるプレーぶりにはダニエルもロイも舌を巻いていた。
さて、こうした分析は、GKトレーニングにどのように反映されるべきなのだろうか。ダニエルは「例えばブラジルW杯においてGKのアクション数は平均26回。そのうちのほとんどはGKが直接関与しなくても大丈夫なプレーだった。シュートやセンタリング、1対1といったGKが防がなければならないプレーは1試合平均8~16回あり、このプレーの質と精度を上げることが重要となる」と語り、壇上でちょっとしたデモンストレーションをして見せた。
ロイがボールを手に持ち、そこからドロップキップ。ダニエルが両手でがっちりとキャッチしたのだが、これはどういうことなのか。周りの参加指導者と一緒に次の展開を見守っていると、「これは非常にオーソドックスなGKトレーニング。みなさん自身もやったことがあるでしょう。では聞くが、試合の中でこれと同じようなシーンがあるか? ないのだ。手で持ったボールを落としてドロップキックされたボールを処理するシーンは試合中に一度としてない!」と激しく指摘した。