はじいたボールを押し込まれるのは、ほとんどがGKのミス
3.ゴールを小さくする動き
まだ記憶に新しい、マリオ・ゲッツェによるブラジルW杯でドイツを優勝に導いた胸トラップボレー。もちろん一連の流れるような動きは素晴らしかった。だが、GKロメロの対応がこれ以上ないというものだったかというとそうではない。あの場面、シュートへの距離はすでに短く、反応はできない状態だった。そうした場合、そこからシュートコースを予測して反応するのではなく、GKとしてやるべきことは体全体で大きな壁を作ることだった。
同じようなシーンが今回のユーロでもあった。スクリーンに映し出されたのは、グループリーグの北アイルランド戦の一幕。ゲッツェが右サイドのヨシュア・キンミッヒからのクロスを胸トラップから右足ボレーに持ち込んだのだが、北アイルランドGKマッガバンは体を正対させたまま、両手を広げることでシュートコースを最大限に狭め、最後の瞬間で反応しようとした。
1秒にも満たない瞬間的なプレーではあるが、飛び込めないと判断した瞬間に壁を作って対応するという決断を下したことで、決まるかもしれないシュートを防ぐことができたのだ。優先順位はしっかりと整理されていなければならない。ベストのプレーができないときにすぐに次善策へと移れるかどうか。それが決定機でシュートを止められるかどうかに響き、その試合の流れにも影響を及ぼす。
4.セービング
強烈なシュートをGKがセーブしたが、こぼれ球をほかの選手に押し込まれて失点。よくあるゴールシーンだし、「せっかくGKが止めたのに、残念だな」と、試合を見ている人は思うかもしれない。だがダニエルに言わせるとこれらのほとんどはGKのミスだという。
例として使われた映像は北アイルランド対ウクライナの2点目。右サイドからマイナスの折り返しを受けた北アイルランドのダラスが右足でシュート。ウクライナGKピアトフは反応したが、ボールはマッギンの足元に転がり、ゴールを許してしまった。
「ポイントはシュートをセーブするときの腕の動きだ。このシーンでGKは手を合わせにいっているだけ。だがサイドに打たれたシュートをセービングするときには腕をアクティブに押し出して外にボールを弾き飛ばさなければならない」(イェルク・ダニエル)