正しいプレーでも失点を防げなければ意味がない
毎年7月にドイツプロコーチ連盟(BDFL)とドイツサッカー協会(DFB)共催で国際コーチ会議が行われる。3日間様々なテーマでいくつもの講義がある中で、今年はDFB専任GKコーチのイェルク・ダニエルとトーマス・ロイによる「ユーロにおけるGK分析」というテーマの講義も行われた。
今回は彼らの話からGKというポジションについての考察を紹介したいと思う。講義ではユーロで見られたミスと好プレーが映像で紹介された。様々なシーンがあったが、その中から今回はGKに求められる要素として4つの項目を取り上げたい。
1.ダイナミックさ
技術的にはすべて正しいプレーであっても、それで失点を防げなければ意味がない。最初に紹介されたのがユーロ開幕戦、フランス対ルーマニアでの先制ゴールの場面。右サイドからパイエがクロスを上げ、ジルーがGKパンティリモンと競り合いながらヘディングで決めたシーンだ。
ダニエルは「GKの立場からすれば、まずジルーのこの当たりはファウルと判定して欲しいというのはある。キャッチしようとする腕に当たっているからだ。またこのパンティリモンのプレーを技術的な面からみれば、飛び上がるタイミング、空中での姿勢の取り方、ボールへの腕の動き、すべて正しい動作だ。だが、ダイナミックさが足りない。絶対、相手にシュートを許さない! という気迫に欠ける点を指摘せざるをえない。GKは相手に『空中戦は厳しいな』と気落ちさせるくらいの存在感が必要なのだ」と説明していた。
試合となれば自分とボールだけの関係だけではない。ペナルティエリア内には相手もいるし、味方だっている。常にベストの状態でボールに向かえるわけではない。だからこそ、いつ飛び出すべきかの判断力を養うことが重要だし、飛び出した以上は何が何でもボールを確実にキャッチするか、遠くまで弾き飛ばさなければならない。