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Jリーグ 8年前

最下位転落も貫く「湘南スタイル」。次のステップに向け、監督と経営者が共有するビジョン

text by 藤江直人 photo by Getty Images

この状態でも勝利と成長を同時に追い求める

湘南ベルマーレのキャプテンを務めるFW高山薫
湘南ベルマーレのキャプテンを務めるFW高山薫【写真:Getty Images】

 もちろん、「湘南スタイル」という理想だけを追求していくのならば、単なる自己満足に浸っただけで終わってしまう。実際、いま現在のベルマーレの戦いぶりは「湘南スタイル」の定義とかなり乖離していると言わざるを得ない。

 自信を失いかけ、ミスをすること、ひいては負けることを怖がるあまりに、さらなる悪循環に陥る。アビスパ戦の前半に2度の決定機を外した高山は、心なしか目を潤ませながら、こんな言葉を残している。

「いまこそ自分たちらしさというか、何ごとも恐れない姿勢を出さなきゃいけないのに、自分を含めてそれを試合で出せないことが勝てない理由のひとつだと思っています」

 以前は他のJクラブの強化関係者から「表情が生き生きとしている」と称賛された躍動感と爽快感を、なかなか共有できないからだろう。アビスパ戦後には大きなブーイングが飛び交い、挨拶に向かったゴール裏では曹監督とすべての選手たち、そしてサポーターがフェンスをはさんで思いの丈をぶつけあってもいる。

 チームとサポーターの双方が勝ちたい、いまの状況から抜け出したいと強く願ってやまないからこそ、異例ともいえる光景は約15分間も続き、最後は拍手のなかで次節以降の勝利を誓い合った。サポーターの熱い思いを胸に刻んだ曹監督は、あらためて「湘南スタイル」を貫くと力を込めている。

「僕は勝利と成長を同時に追い求める。ダブルインカムを得られるように、この状態でもやっていきたい。地面を見ても何も変わらない。上を向いて、どんな空なのか、晴れなのか雨なのかを感じながら、日々しっかりと選手たちと向き合っていかなきゃいけない。間違っているかもしれないけど、僕はそう思っています」

 状況的には厳しいと言わざるを得ない。それでも、可能性はゼロではない。そのためには、何よりもまず「湘南スタイル」の原点に回帰すること。残された5試合は奇跡を手繰り寄せるだけなく、ベルマーレのアイデンティティーまでもが問われる戦いになる。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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